AI Paper English F.o.R.

人工知能(AI)に関する論文を英語リーディング教本のFrame of Reference(F.o.R.)を使いこなして読むブログです。

VAE | Abstract 第1文

How can we perform efficient inference and learning in directed probabilistic models, in the presence of continuous latent variables with intractable posterior distributions, and large datasets?

 

Diederik P Kingma, et al., "Auto-Encoding Variational Bayes"

https://arxiv.org/abs/1312.6114

通常の自己符号化器(Autoencoder)とは異なり、観測されたデータがある確率分布に基づいて生成されたと仮定する変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE)の論文である"Auto-Encoding Variational Bayes"のAbstractの第1文について、英語リーディング教本のFrame of Reference(F.o.R.)を使って英文構造を解読します。

 

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「扱いにくい事後分布を伴う連続的な潜在変数と大規模なデータセットの存在下で、有向確率モデルの効率的な推論と学習をどのように我々はどのように実行できるだろうか?」 

 

疑問詞のHowから始まる疑問文です。論文で疑問文が使われることは珍しいですし、しかもそれがAbstractの最初の文として使われています。読者の目を引くために、問いかける疑問文の形から始めたのだと思います。

 

この文は特殊な英文です。なぜなら、この文はF.o.R.の基本に従わない英文だからです。つまり、英語リーディング教本 および英語構文のエッセンス Stage-1に記載されているF.o.R.によって8割の英文は正確に構文を把握することが可能とされていますが、この英文にはその範囲外である2割に該当する構文が用いられています。

 

具体的には、この英文では「繰り返しを避けるための省略」が使われており、英語構文のエッセンス Stage-3で説明されている内容です。

  1. 「完全な文」と「繰り返しを避けるための省略がある文」の間には、接続詞、コロン、セミコロン、コンマ、ダッシュなどがあります。特に、andまたはasが中間にあることが非常に多いです。
  2. 「繰り返しを避けるための省略がある文」は共通部分を全部省略するのではなく、省略部分の直前か直後に手がかりとして共通部分を少し残すのが普通です。

この文では、最後のコンマの前までで完全な文として成立しています。その後ろに", and large datasets"が挿入されています。そこに"in the presence of"を補うことで、文として成立させることができます。

なお、コンパスローズ英和辞典(薬袋善郎先生が英語リーディングの奥義でオススメしている辞書)の巻末の文法解説(2227ページ)に、「省略」に関しての説明があります。

コンパスローズ英和辞典 [並装]

重複を避けるための省略

英語では同じ語句が連続して現れる場合、2回目以降を省略する傾向がある。ただし省略が起こるのは、省略された語句を読み手・聞き手が復元できる場合に限る。

したがって、"in the presence of"を補うことを読み手が想像できるので、ここでは省略することが可能です。

 

また、intractableは「扱いにくい」という意味の形容詞です。

intractable とは 意味・読み方・表現 | Weblio英和辞書

 

あと、"inference and learning"の部分は"O + O"と書けるのですが、前後の形容詞修飾の矢印が重なって煩雑になるので、ひとまとめのOにしました。

 


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