MobileNet | Abstract 第3文
We introduce two simple global hyperparameters that efficiently trade off between latency and accuracy.
Andrew G. Howard, et al., "MobileNets: Efficient Convolutional Neural Networks for Mobile Vision Applications"
CNNを軽量化して、スマホなどのモバイル端末でも使用できるようにしたMobileNetの論文である"MobileNets: Efficient Convolutional Neural Networks for Mobile Vision Applications"のAbstractの第3文について、英語リーディング教本のFrame of Reference(F.o.R.)を使って英文構造を解読します。
「我々は、レイテンシと精度との間で効率的にトレードオフする2つの単純な大域的なハイパーパラメータを紹介する。」
意味もわかりやすく素通りしてしまいそうな文ですが、この文の構文の解釈については困ってしまいました。なぜなら、この文はF.o.R.のルールから解釈しようとすると、英語構文的にうまく解釈できない英文だからです。もし正しい解釈の仕方がわかる方がいらっしゃいましたらコメントいただけますと嬉しいです。
この文のポイントは、"trade off"が名詞ではなく、他動詞+副詞であるということです。そして、他動詞の目的語が省略されていることが、F.o.R.の知識だけでは解釈できないところです。
tradeが名詞ではなく動詞である理由は、
- thatから始まる形容詞節の中で文が成立するためには何か一つは動詞が必要で、tradeのみ動詞になれること。
- efficientlyは副詞であるので名詞は修飾できないが、tradeが動詞であれば修飾できること。
といったことが挙げられます。
また、tradeが動詞の場合、"trade off"の組み合わせでは他動詞③としての用法はありますが、自動詞①としての用法は見つかりませんでした。
trade off - definition and synonyms
PHRASAL VERB [TRANSITIVE]
to accept a disadvantage so that you can have a benefit
They traded off a positive rate of inflation for a lower unemployment rate.
Macmillan Dictionaryの例文のように、trade offには動詞の目的語が必要になります。
しかし、今回の英文には動詞の目的語がありません。F.o.R.の観点では、動詞の目的語が省略されることは想定されていませんので、英語構文として矛盾があり、文として成立していないという解釈になるかと思います。
また、少し調べてみたところ、動詞の目的語が省略されるのは例外的な用法なようで、最近でも研究されている解釈の難しい分野のようです。
「英語において他動詞の目的語が省略できるというのは例外的な状況であり」と記載があります。
私には難しくてよくわかりませんでしたが、動詞の目的語を省略して良い条件というものがあるようです。
私の個人的な解釈になりますが、動詞の目的語として、"the relationship"を補うとすっきりとした文になると思います。
「我々は、レイテンシと精度との間の関係を効率的にトレードオフする2つの単純な大域的なハイパーパラメータを紹介する。」
今回の英文は、F.o.R.のルールから解釈しようとすると説明がうまくできない英文でした。ただし、F.o.R.という一つの物差しを使って考えると説明が難しいと言っているだけで、この文の構造が間違っていると言っているわけではないということはご理解いただきたいと思います。正しい解釈がわかる方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけますと幸いです。
その他についてですが、レイテンシはそのままカタカナで使われることが多いかと思いましたので、そのままにしました。待ち時間などの意味で、MobileNetの計算スピードについて触れています。
薬袋善郎先生の公式ウェブサイト